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宇野功芳(1)

初回:2002.12. 8

 宇野功芳氏は雑誌「レコード芸術」の批評欄で活躍のほか,多数の著書もあるというクラシック音楽に関する批評家で,かつ,女声合唱団やオーケストラの指揮活動をされていらっしゃる方です。私は氏のことを,現在活躍中のクラシック音楽批評家の中で,唯一,「批評」をやっている批評家だと思っています(他の批評家は「批評」ではなく,「紹介」をやっているのみだと思っています)。氏の情熱が籠もった批評は読む者にクラシック音楽への興味を与え,また,刺激を与え続けてきました。私は氏の文章が大好きで,氏の著作の2/3以上は読んでいます。また,氏は長らく雑誌「レコード芸術」の批評欄の常連であり,以前は「協奏曲」の批評を,現在は「交響曲」の批評を担当していることより,この雑誌をとっていれば,毎月,氏の情熱的な文章を読むことができます。そして,これ以外に,種々の雑誌にても氏の文章は読むことはでき,一時期,「管球王国」というクラシック音楽には直接関係ないオーディオ雑誌にも連載を持っていましたし,現在は,最近,SPレコードの復刻CDを付録に付けていることで注目されている「クラシックプレス」というクラシック音楽雑誌にも連載されてます 。

 氏の批評の特長は,極めて実直であることで,気に入らないものはスパッと切り捨て,気に入ったものはたとえ反対が多くても擁護するということだと思います。すなわち,氏の批評は氏の本音を読むことができるという気分にさせてくれるものだと思っています。氏のおかげで,ブルーノ・ワルターは現在でも尊敬・注目されている指揮者となり,また,ウィルヘルム・メンゲルベルクも一部の熱狂的なファンにより支持されています(勿論,このほかに,フルトベングラーも強力に支持していましたが,彼に関しては,例え,宇野氏がいなくても,現在の強力な支持は続いたと思います)。氏の功績の中で,特に大きなものは,朝比奈隆氏を強力に支持したことで,氏の強烈な文章によりファンは着実に増え,晩年の数年間のコンサートは演奏終了後に長いスタンディング・オペレーションが続くというまるで宗教儀式のようになってしまったのだそうです。その上,朝比奈氏のCDはそれこそ無数と言いたい位の種類が出ましたし,DVDまで出ております(注:「レコード芸術」2002年4月号によると,LP/CD:158種,DVD:17種で,現時点では更に増えていると思います)。このため,従来は朝比奈氏の録 音をけなしていた宇野氏以外の批評家の方々も,朝比奈氏の晩年には誉めざるを得なくなるほどでした。

 また,前述のごとく,氏は女声合唱団の指揮者であり(氏は音楽大学の声楽科出身とのことです),女声合唱団との録音も10枚近く出しております。そして,近年はそれだけでは飽き足らなくなられたようで,まず,最初はアマチュア・オーケストラの指揮を,そして,次は「オーケストラ・リサイタル」ということで,プロのオーケストラの指揮をするようになりました。このオーケストラの指揮は極めて個性的で,特に,1984年の「ベートーベン:交響曲第9番」(日本大学O.)は曲を知ってる者にはのけぞってしまうほど面白いものです。何せ,フォルテのところがピアノで演奏される,すなわち,力が入るところが,急に力が抜けてしまうという代物ですから。これ以外には,1988年の「ブルックナー:交響曲第4番」(新星日本so.)も第3楽章が極めて個性的で,「あれっ」と思うような旋律が流れます。この新星日本so.との「オーケストラ・リサイタル」は既に終了してしまいましたが,アマチュア・オーケストラの指揮はまだやられているようで,2002年7月6日にも「アンサンブルSAKURA」とのコンサートが開かれました。私はこれを聴きに行きましたが,モーツアルトというのにティンパニ イの超強打,強音の前の「溜め」,ポルタメントの多用,テンポの動き等,かなり,楽譜から逸脱していると思われるものでしたが,「ブラームス:交響曲第1番」の第4楽章はそれが生き,感動的な演奏となりました。と言うことで,氏が世界で有数の指揮者であることは間違いないと思っています。そして,確実に言えることは,氏が誉めまくっているクナツパーツブッシュやヴァントよりも,氏の方が遙かに素晴らしい指揮者であるということです。私が演奏に求めることは,時代も環境も異なる昔の人が作った楽譜を当時のまま再現することではなく,楽譜を元に,演奏家の責任で演奏家の幻想をドンドン膨らますことですので,これを実行している宇野氏を強く支持したいと思っています。

 さて,話は戻って,氏の批評ですが,私は氏の熱っぽい文章を読むのは大好きですが,現在はその批評そのものは,眉につばをつけて読む状態,すなわち,ほとんど信じていません。というのは,氏の批評を読んで,きっと素晴らしい演奏なんだと信じて買ったLPやCDが,私には少しも良いとは思えなかったことがほとんどだっただからです。特に,氏が最も好きな指揮者と広言しているクナツパーツブッシュの演奏のほとんどは全く私には合いませんでした。ああ,氏に騙されて何枚ものクナツパーツブッシュの指揮の録音を買ったことか!! 勿論,これは騙された私が悪いことは重々承知していますが,それでも,やはり,恨み骨髄といったところですね(笑)。ちなみに,氏に騙されて買ったクナツパーツブッシュの指揮の録音には下表の録音があります。ううん,それにしても,これだけあれば,1枚位は私の趣味なものがあっても不思議ではないのですが,全く無いとはどういうことなのでしょうか。ということで,宇野氏が教えてくれた教訓の1つは,「批評は信じるな,感性は一人一人が異なる」ということです。すなわち,現在は「レコード芸術」の批評を読んで,宇野氏が誉めているものは ,余程のことがない限りは買わないという状態です。すなわち,本来の意味とは違いますが,宇野氏の批評は私にとっては「反面教師」です(笑)。

 2002年10月になり,宇野氏の新著作「宇野功芳の白熱CD談義 ウィーン・フィルハーモニー」が発売されました。これは,氏は指揮活動等で忙しくてもう書き下ろしはできないとのことで,自分では書かずに口述してテープに録音し,それから起こしたものを修正したものだそうです。これは読んでいて「ニコニコ」してしまう程面白かったものですが,内容的にはクナツパーツブッシュに対する絶賛の嵐で,ここまで行くと「あばたもえくぼ」だと思ってしまいます。私の評価は「トンデモ本」の一種と言うことですが,それでも,クラシック音楽のファンの方にとっては,「聖書」みたいなものだと思います。



<私が持っているクナツパーツブッシュ指揮のLP及びCD>(LP及びCD中に1曲のみのオムニバス盤を除く)

作曲者 曲   名 オーケストラ 会社・レコード番号 5段階評価
ブラームス 大学祝典序曲
ハイドンの主題による変奏曲
アルト・ラプソディー
悲劇的序曲
ウィーンpo. <LP> DECCA ECS701
ブルックナー 交響曲第3番 ウィーンpo. <LP> KING MZ5091
- 交響曲第4番 ウィーンpo. <LP> KING MZ5092
- 交響曲第5番 ウィーンpo. <LP> DECCA ECS530
- 交響曲第8番 ミュンヘンpo. <LP> MCA VIC-5201/02
<CD> MCA MCAD9825/26A
ワーグナー リエンツェ序曲
さまよえるオランダ人序曲
ジークフリート牧歌
ローエングリーン第1幕前奏曲
ミュンヘンpo. <CD> MCA MCAD29811A
- ニュルンベルグの名歌手前奏曲
タンホイザー序曲
「トリスタンとイゾルデ」前奏曲と愛の死
パルジファル前奏曲
ミュンヘンpo. <CD> MCA MCAD29811B
- 夜明けとジークフリートのラインへの旅
ジークフリートの葬送行進曲
幼き子があなたのお母様の胸に
ウォータンの別れ
「トリスタンとイゾルデ」前奏曲と愛の死
ウィーンpo. <CD> KING K30Y1034
- 「指輪」全曲(1957)* バイロイト祝祭歌劇場O. <CD> Columbia OOCO1201/15
- 「ワルキューレ」第1幕
ウェーゼンドンクの5つの歌
ウィーンpo. <LP> KING SL1187/8
- パルジファル(1960) バイロイト祝祭歌劇場O. <CD> CC

*)LP時代の「レコード芸術」の新年号にて,宇野氏が「初夢のレコード」として熱く語っていたものです。その後,随分たってから本CDが発売されて(上記新年号の頃は,LPでも未発売でした),素晴らしいに違いないということで3万円位出して購入しました。しかしながら,氏の著作によると,この曲は録音が悪ければダメとの理由で,この録音は氏の推薦盤には入っていません。なお,私が持っているのは日本コロンビアのものですが,輸入盤のゴールデン・メロドラムのものはかなり音が良いそうです(私は聴いたことがありません)。



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