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1960年11月から1963年12月にかけて,ほぼ毎月1冊の割合で,筑摩書房より,「世界音楽全集」という17cm片面モノラル録音のソノシートが1冊につき原則として4枚入っている本が発行されました。それは全40巻にもなり,更に比較的長い協奏曲や交響曲の録音のソノシートが入っている別巻が全5巻が発行されました(勿論,これらは長いためにソノシート1枚には入らず,また,一部の曲では1枚につき1楽章としようとしてもダメで,この場合は1楽章が2枚のソノシートに納められました)。
一方,本の構成はどうなっているかというと,全部で30ページ程で,その主な内容はソノシートに収録されている曲の紹介・解説,エッセイ,そして,演奏者の略歴と紹介というものでした。ですから,その後に出た小学館の「世界の音楽」の作曲家の伝記に焦点を当てたものとは随分異なる作りとなっています。なお,価格ですが,ソノシートが4枚のものは1冊380円,5枚のものは1冊450円でした。
さて,この全集は国会図書館に全巻揃っている筈で,また,国会図書館では「特別資料室」にて音も聴くことはできます。私がこの本のことを知ったのは,東京・神保町の古書店街にある「富士レコード」という中古レコード店にこの本が大量にあるのを見てからで,日本人による演奏がこんなにも残っていたのかと驚いてしまいました。しかしながら,その後に行くと,その半分位は無くなり,更にその後に行った時は2,3巻を残して無くなっていました。世の中にはこの手のものを収集している方はいらしているようで,インターネット上のGoogleあたりで検索をかけてみると,「ぶりちょふ」という方が全巻は揃ってはいませんが,2/3程度は揃えていらっしゃるようです。
おそらく,このソノシートに録音されたものはこれ専用であり,LP等にはならなかったであろうから,また,「ソノシート」というと「安物」,「低級品」というイメージが強いことから,これらはCD等による復刻もされずに忘却の彼方に消え去ってしまうと思われます。しかしながら,これらは日本人によるクラシック音楽の演奏史という観点から非常に重要なものだと思います。
一方,私の方はどのようにして情報を得たのかというと,インターネット上の「国会図書館書誌情報」及び国会図書館での調査です。
さて,各巻に収録されている曲目や演奏者を見て驚くのは,現在のクラシック音楽に対する考え方との違いです。すなわち,17cmソノシートへの収録時間(1枚5〜7分位)の関係もあるでしょうが,短いものが多いこと(SPと感じが似ていますね)と,今ではクラシック音楽とは思われていないようなものが結構入ってること,重たい曲ではなく軽い曲が多いこと,そして,交響曲が本巻には入っていないことです。すなわち,当時のクラシック音楽は長いものではなく,アンコール・ショーピースのような短いものが好まれていたようですね。やはり,これはSP時代からの流れだったのだと思います。
それにしても,元テープを探し出して,どこかの会社がCD化をされないものでしょうか。今は放送局に残されている実況録音テープからのもののCD化が活発に行われていますが,このようにソノシートとして出されたもののCD化も文化的遺産として必要だと思うのですが。もっとも商売にはなりそうもないので,どこかの博物館あたりにしか可能性がないでしょうが。後は,個人が再生したものをパソコンにてWAV化し,それをCDとして使えるCD-R化して作成・配布という形式が考えられますが,やはり,著作権上からは難しいのでしょうか。
世界音楽全集 第28巻 表紙 横:20cm,縦:19.5cm |
ソノシートは本文の後の紙袋を綴じたものの中に入っている | ソノシート(直径:17cm) 色は白のため,背景を紫色にして撮影 |
<2009. 2.22追記>
2008. 5.31(土),本日は18時近くなっても小雨が降っている状態の上,まるで晩秋のような寒さなので,結局,1日中家にいました。そして,午前中は前述の通りに以前に撮影した写真のデジタル化,午後はこれも大昔に入手したソノシート本「筑摩書房:世界音楽全集1」中の17cm片面ソノシート4枚をデジタル化しました。すなわち,電気蓄音機「Numark
:PT-01」で再生し,WAVE Recorder「ローランド:EDIROL R-09」に録音し,それをパソコンで編集し,最終的にCD化するためにWAVEファイルとしました。これらの録音はその後,LP化あるいはCD化されていないと思いますので貴重なものだと思います。
<2022. 3.31追記>
著作権法が改正され,2021. 1. 1(金)より施行されたのですが,それによると,所謂,クラシック音楽に関しては,1967年までに発売された録音はLPやCD等を再生してWAVEファイル等にしたものを,インターネット上で公開してもOKのようです。ただし,編曲されているものは,編曲者に著作隣接権があることから,編曲者が1967年までに亡くなっている場合のみOKとなります。また,LP等にはジャケットに写真や絵,あるいは解説文等もありますので,それらは写真を撮った人や絵を描いた人,解説を書いた人等に著作権がありますので,ジャケット写真を載せたり,解説文を引用する場合も,この人達が1967年までに亡くなった場合のみOKになります。
上記を考慮し,世界音楽全集全45巻に入っているソノシートは,一部の編曲ものを除き,WAVEファイル化したものをインターネット上で公開しても問題ないと判断し,ソノシートよりのWAVEファイル化を行いました。
すなわち,”LPプレーヤー「KENWOOD:KP-1100」+フォノカートリッジ「EXCEL:ES-70EX」(ただし,これはスレレオ録音再生用であることから,RとLを直列に接続してモノラル化した)+プリアンプ「AIWA:C7」+Wave
Recorder「Roland:EDIROL R-09」”にて,WAVEファイル(24bit・48KHz)を作成し,できたWAVEファイルをパソコンに移動して,音編集ソフト「Internet:Sound
it! 8 Premium」にて雑音軽減等を行って完成です。なお,この音編集ソフトでは,まず,クリックノイズやスクラッチノイズ等を軽減し,更に,低音・中音・高音のバランスをとった上,音量も調整してようやく完成します。
LPプレーヤーでソノシートを再生 | プリアンプを通してWAVE Recorderで録音・ヘッドフォンでチェック |
世界音楽全集の各巻には直径17cm片面モノラル録音のソノシートが4枚入っているのですが(別巻では5枚のものもあります),1枚の再生時間は5分強と言うことで,LPレコードの片面25分程度のものを再生する場合と比較して,まるでSPレコードのように頻繁にLPプレーヤーの所に行って別なソノシートと交換する必要があり,LPレコードのWAVEファイル化より遙かに大変です。このため,ホッとする暇がないので,精神的にもきついです。
この世界音楽全集は全部で45冊ですが,ソノシートは塩化ビニール製の薄いペラペラの円盤ですので,波打ったりする等の劣化がしやすいので,同じものを2冊持っているものが10冊位あるので,それもWAVEファイル化しなければなりません。なお,世界音楽全集ですが,直径20cm両面ステレオ録音のソノシートが4枚づつ入っている「世界の音楽」(全15巻,小学館発行)」とは異なり,リアル・タイムで入手したものではなく,古本屋さんや中古レコード店,インターネット等で少しづつ入手して,5年以上かかって,ようやく全巻揃えたものです。
と言うことで,2021年になり,集中的に世界音楽全集のWAVEファイル化を行い,それをmp3ファイル化したものを,そのURLを公開してダウンロードする形にてインターネット上で公開しました。WAVEファイルではなく,mp3ファイルを公開したのは,私が公開用に使用している無料のインターネット・ストレージ「Google
Drive」は最大15GBまでの容量しか保存できないからです。すなわち,もし,WAVEファルで行ったら,沢山の曲を公開できなくなることから,WAVEファイルの1/10以下の容量になるmp3ファイルで公開することとしました。mp3ファイルはWAVEファイルより音的に劣ると言われていますが,普通に聴く限りではWAVEファイルとmp3ファイルの音の差について気が付かないことが多いです。
「世界音楽全集」中のソノシートのWAVEファイル化ですが,インターネット上の大型掲示板「2ch」の「音楽」の「クラシック」中の「自家製盤起こし音源をうpするスレ」にて,「第12巻 チェロ 第1」と「第22巻 チェロ・オルガン」中のチェロ曲が公開されていました。これ以外に,別巻4「ベートーベン:交響曲第5番」(近衛秀麿指揮近衛交響楽団)がフォンテックよりCDで発売されました(2016.
5.25発売。番号:FOCD-9713)。ただし,元の録音テープが見つからないとのことで,ソノシートを再生したものだそうです。
<「全40巻+別巻5巻」の内容(1)>
第 | 発 行 年月日 |
表 題 ・ 表 紙 | 中に入っているソノシートの内容・ソノシートより作成したmp3ファイル | ||||||||||||||||
1 | 1960.11.25 | <ヴァイオリン 第1> |
| ||||||||||||||||
2 | 1960.12.19 | <声楽 第1> |
|
注)「レコードNo.」は,CMWが筑摩書房の番号,FSがソノシートを録音製作した日本ビクターの番号と思われる。第1巻・第2巻においては,混乱があったようで,番号の使い方が他と異なっています。また,第2巻の1枚が東芝音楽工業製なのは,製盤不良があり,その交換されたものと思われます(本件に関しては,このシリーズを発売当時に全巻購入された古井野聴夫氏より「二枚だけ東芝でプレスされたのは,五十嵐喜芳氏が同社の専属だったためであり,不良交換ではありません」との情報をいただきましたが,第2巻目の五十嵐氏のソノシートは2枚あり,東芝音楽工業製のは1枚のみですので,どちらが正しいのか,不明です)。
追記1)上記の「注」に関し,2003年7月4日に神奈川県にお住まいのfujisk氏より,以下の主旨のメールをいただきました。
(1)筑摩書房の「世界音楽全集」のソノシートは,神奈川県藤沢市の片瀬にあった「アテネ・レコード」で製盤されていました。アテネ・レコードで製作されたソノシートにはそのレーベル付近に刻印による製造番号があり,それは,例えば「A-246-2-1」あるいは「A-298-5」のように「A」で始まっています。また,当時のレコード会社にはソノシートのプレス機はなく,専門の会社に製造を委託していた。アテネ・レコードは日本ビクター関係を中心に行っていました。
(2)最近,大船の古書店にて,「世界音楽全集」の全巻を入手しました。第2巻のソノシート4枚の刻印による製造番号を調べてみると,いずれも(1)に準じた番号がついています。
(3)以上より,「CMW-023」の副番号「ER-1022」が他のものと異なる形式(他のものは例えば「FS-5072」のように,「FS-****」となっている)なのは,歌手の「五十嵐喜芳(T)」氏が東芝音楽工業専属のために,日本ビクターの表記を使えなかったためと思われます。
追記2)上述のメールをいただき,私の持っている「CMW-023」を調べてみたところ,以下がわかりました。
(1)「CMW-023」には刻印の製造番号がありませんでした。すなわち,fujiskさんのお持ちのものは「A-299-2」と刻印されているのですが,私のには全く無いのです。また,このソノシートは他のものと異なり,やや分厚く,また,透明性も異なり(他のものは半透明ですが,CMW-023はかなり不透明です),レーベルに書かれた文字も異なります。また,中の穴のまわりも異なります(下の写真参照)。「CMW-023」は全体的に,非常にやぼったい感じがします。
(2)これから考えると,「CMW-023」はアテネ・レコードにある他の形式のプレス機を使ったか,他の会社のものと考えられますが,他の会社による製造の可能性が高いのではと思います。勿論,アテネ・レコードによる製造の可能性も否定できませんが,全体的に作りが野暮ったいことを考えると,他の会社の製造の可能性が高いと思います。おそらく,購入時はアテネ・レコード製造のものであったが,一部のソノシートに製盤不良があり,交換希望者に対して,別なプレス機あるいは他社で製造したものと買えたのではと思います。そして,製盤不良が無かったのが古井野聴夫氏が当時買われたもの,そして,fujisk氏が最近入手したものではないかと思います。なお,レーベルの印字部分の色が濃い緑色になっていますが,毎号に入っている月報(小冊子)には,製盤不良があり,それは良盤と交換すること,その盤は最初に入っていたものと区別するために,緑色でも濃いものを使っていると記載されています。
(3)fhjisk氏によると,当時にソノシートをプレスすることができたのは,フランスから機械を輸入した「朝日ソノプレス」か「東京電化」,そして,自前でプレス機械を作った「アテネ・レコード」等で,朝日プレスは自分でソノシートを販売していたことから,私が持っている「CMW-023(ER-1022)」は,東京電化あたりが代替プレスを行ったのかもしれないとのことです(東京電化はアテネ・レコードのソノシート製作の初期の頃に原盤製作をおこなってアテネに供給していたことがあったそうです)。
追記3)2015. 2.15付にて,古井野聴夫氏より拙ブログに以下の再コメントをいただきました。
最近ようやく中古で全巻を入手できました。現在の考えは次のとおりです。
(1)第3巻に挟まれて配布された小冊子にあるとおり,発売当初に同氏の2枚のシートには,かなりの不良品がまじっていたようです。不良交換は第3巻の発売日以後に行い,シートに印刷する文字の色を変えて,旧製品と区別できるようにしています。
(2)小生は当時,近くの書店に配達による販売を頼んでおり,いつも発行日とほぼ同日に配達されました。受け取った五十嵐氏のシートは,2枚とも東芝音楽工業と記された不透明なものでした。小生は気づきませんでしたが,不良が発生したのは,この緑色(というよりも抹茶色)の文字が印刷された野暮ったい方では,と考えます。
(3)最近入手した第2巻には,2枚とも不良交換後のものと思われるのシートが入っておりました。シートは半透明で,文字が茶色(文字通りのブラウン色)で,レコード会社名は印刷されていません。CMW-021はA-298-5,CMW-023はA-299-9とマトリクス番号が打たれており,これは第3巻のシートより後の番号です。FS-****は打たれていません。ETR-21***とETR-22***の文字がかすかに見えますが,無理に消したようにも見えます。
(4)以上の状況から,不良を発生したプレスは不透明な野暮ったい方であり,交換品は日本ビクターの名が入った他のシートと同じ会社でプレスされたものかと推定します。
さて,現在,私はこの第2巻を2冊持っています。ソノシート「CMW-021」に関しては,両者同じですが,「CMW-023」に関しては異なっています。すなわち,1枚はレーベル部分が赤字で「CMW-023」(刻印はETR-22とA-299-6),もう1枚はレーベル部分は濃い緑色の文字で「CMW023」,「ER-1022」,「東芝音楽工業」(刻印は「ETR-22」)と書かれた野暮ったい感じのものです。後者は再生する時,針圧を3.5gかけないと張り飛びを起こしたことを考えると,この東芝音楽工業のものが不良品であったと推測されます(すなわち,追記2に書いたことは間違いで,野暮ったいものは不良品であったと思います)。不良品は2枚あった筈なのに,なぜか1枚しか交換されなかったようです。また,交換品して新たに受け取ったものはアテレ・レコードで製造したものと考えられます。
レーベル部 CMW-023/ER-1022(東芝音楽工業) |
レーベル部の中心(左の写真を拡大) CMW-023/ER-1022(東芝音楽工業) |
レーベル部 CMW-024/FS-5072(日本ビクター) |
レーベル部の中心(左の写真を拡大) CMW-024/FS-5072(日本ビクター) |
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